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◇◆★邦楽バトルロワイヤル★◆◇

1 :[1日目午前0時スタート前後:武道館]:01/12/10 22:49 ID:DKcUYppD
一瞬、慣れ親しんだ武道館ではないとスガシカオは錯覚した。
もちろん、そこは以前来た時と変わらない日本武道館であったのだけれど、
何かがおかしかった。何かが違っている。
すぐに、スガシカオはその原因に気づいた。窓の外はすでに日が暮れ、闇に包まれていた。
武道館内のスタンド席にもアリーナにも観客らしき人間は誰一人座ってなかった。
さっきまでリハーサル中であったはずなのに・・・
スガシカオは、辺りをそろそろと見回した。メディアでおなじみである歌手たちが、
先ほどまでのスガシカオと同じように床に伏して眠っている。
そのなかには、スガシカオの親友でもあるSMAPの中居正弘の姿もあった。
俺、どうしたんだろう? スガシカオがそう思ったとき、道場内に大きな音がした。
皆、眠りから覚めたばかりらしく、スガシカオと同様に周囲を見回している。
一体、何が起きたのだろう?何故俺達は、ここに居るのだろう?
誰もが困惑と不安を隠しきれずにいた。
「おい!エーー、シカオさん……何が、どうなってるだエー?俺、怖い……怖いよ……」
中居は、目に涙を溜めて不安を訴えた。
スガシカオは「大丈夫だよ」と言ってあげたかったが、出来なかった。
自分自身、現状が怖くてたまらなかった。
そう、嫌な予感がする。
何度もニュースで聞いた、『あれ』の状況によく似ている……
突然、施錠されていたアリーナの扉が、開いた。
そして、銃を携えた兵隊の様な連中が十数人、入って来る。
兵士達はステージの前に整列すると、銃を歌手達に向け、構えた。
いつでも発砲できる体勢だ。
まさか……
コツ、コツ、と、兵士達とは違う、軽い足音が聞こえた。

2 :[1日目午前0時スタート前後:武道館]:01/12/10 22:50 ID:DKcUYppD
教室に入って来たその足音の主は……井上陽水だ。
猪木は教壇に立つと、いつもと変わらぬ屈託のない笑顔で、話し始めた。
「元気ですかーーー!まさかお前らに集まってもらう事になるとは、この俺も想像できなかったぞー!」
のいつにも増した高慢な口調だ。
しかし、今日は普段にも増して、自信に満ちているようだ……スガシカオにはそう映った。
そして陽水は、アリーナ内をぐるりと見回すと、衝撃的な一言を言い放った。
「今日はこれより、諸君に殺し合いをしてもらう!」
会場内の全ての空気が止まった。
「お前らは、今回の『プログラム』に選ばれたのだよ!ダーーー!」
スガシカオの予感が、的中した。
中居は、ギュッとスガシカオの腕を掴んで、震えていた。
誰かが、うっ、とうめいた。

3 : :01/12/10 22:50 ID:yV9CoFUZ
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4 :[1日目午前0時スタート前後:武道館]:01/12/10 22:50 ID:DKcUYppD
『プログラム』
それは、魔の法律。
正式名は『歌手助成特別法』という。
近年、邦楽ではパクリが激増の一途を辿っていた。
何故、こんなにも簡単にパクリをしてしまうのか?
何故、互いの理解を深めようとせず、安易なパクリに走ってしまうのか?
……そして制定されたのが、この法律だった。
真に「歌って表現する強さ」を持ち合わせた人間だけを選抜する法律。
メジャーのあらゆるミュージシャン、アーティスト、アイドルの中から無作為抽出され、最後の一人になるまで殺し合いが行われる。
しかし、このプログラムが実行に移されることはゼロに等しいと言われていただけに、ミュージシャンたちはすぐには信じられなかった。
「冗談なら、やめろ!糞ぶっ掛けるぞ!」
聞き取り辛い声が響いた。
邦楽一の権力者ともいえる、吉田拓郎だ。
「俺は天下の吉田拓郎だ!なんでこんなプログラムに参加しなくちゃいけないんだ!」
拓郎は嘲笑を込めて異議を唱えた。
そもそも、このプログラムの指揮権が井上陽水にある事に、理解が出来なかった。
普通なら、政府や国家委員会の担当者が赴いて、ここで説明するだろう。
ここに居る兵士達も、おそらく井上陽水私設軍やSPの面々。
驚かせておいて、実はパーティーでも開くのだろう……そう思っていた。
しかし、現実は残酷だった。
「拓郎!テメーはまだ信じられない様子だな。ならば、信じられる物を用意してやろう!」
陽水は表情を変えずにそう言うと、指をパチン、と鳴らした。
教室の扉が開き、『何か』を載せたベッドが運び込まれて来る。
ビニールシートの下の『何か』からは、少し生臭い匂いがした。
「見せてやれ」と陽水が言うと、側近の奥田民生がそのシートを外した。
一瞬の静寂。
そして次の瞬間、拓郎が絶叫した。
「……永チャーーーン!!」

5 :[1日目午前0時スタート前後:武道館]:01/12/10 22:51 ID:DKcUYppD
拓郎の叫びが、一瞬にして全員の悲鳴へと変わる。
そこに有ったのは、ロックンローラー矢沢永吉の『なれの果て』だった。
まるで操り人形を投げ捨てたかの様に関節は捻じ曲がり、
頭蓋骨は陥没し、両目も潰されていた。
「矢沢!永ちゃああああんっ!!」
拓郎は泣き叫びながら、矢沢の亡骸に近付こうとする。
しかし次の瞬間、兵士達が一斉に長州に向け、銃を構えた。
それに気付いたキンキキッズの二人が、慌てて長州を引き止める。
「拓郎さん、駄目だ!今行ったら、拓郎さんも殺されちゃうよ!」
「でも!永ちゃんが!」
拓郎はその場にヘナヘナと座り込むと、声をあげて泣いた。
泣くことしか、出来なかった。
そしてその光景は、ミュージシャン達に現実を認識させるのに、充分だった。
陽水が説明を続ける。
「矢沢は、このプログラムを反対しやがって!コノヤロウ!」
死臭が室内を満たしてゆく。
それはまさしく、絶望の臭いでもあった。
陽水は胸元から政府印の押された封書を取り出すと、その中の文書を事務的に読み始めた。
いわゆる『宣誓文書』だ。
「……本プログラムは、日本国政府の完全管理下のもと、Jポップミュージックの代表的存在である
 井上陽水によって執り行われるものとする旨を、ここに通達する……」
宣誓文書など、誰も聞いてはいなかった。
ただ、殺戮の海に放り込まれた事実を受け止める事しか、出来なかった。
自分達を庇ってくれた(であろう)矢沢永吉が、あっけなく殺された。
こんな理不尽な殺人さえ、合法だという。
いや、理不尽な殺人劇は、これから始まるのだ。自分達の手によって……
どうする?どうすればいい?ここから逃げ出す方法は無いのか?
誰もが、戦うことなく生き延びる方法を自問自答していた。
と、その時、陽水が宣誓文書を読むのをピタリと止めた。
「……どうやら、俺の話を聞いてくれない人が、いるようだなーコノヤロウ!」

6 :   :01/12/10 22:51 ID:ietENvyb
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-SanJose/5686/bin/haratai.swf

7 :[1日目午前0時スタート前後:武道館]:01/12/10 22:51 ID:DKcUYppD
……まさか、聞いていないのを悟られたのでは?
ミュージャン達は、恐る恐る陽水の視線の先を辿った。
陽水が見ていた先……そこには、グレイのテルとラルクのhydeの姿があった。
テルはまだ睡眠薬が効いているらしく、眠ったままだった。
それをhydeが必死になって起こそうとしている。
「……テルさん、起きろよ。寝てる場合じゃないんだってば……」
hydeは、陽水を刺激しないように、小声で呼び掛けながらテルの肩を揺すっていた。
その呼びかけに応じたのか、テルがようやく目を覚ます。
「……あれ?hydeくん。おはよう!どうしたんだよ?」
まだ現状を把握していない彼の一言が、会場中に響き渡った。
誰かの呟く声がした。
「……だめっ!」
次の瞬間、陽水は小さなリモコンの様な物を取り出すと、テルに向けてそれを「ピッ」と鳴らした。
ピピピピ、ピピピピ……
何処からともなく、アラーム警告音が聴こえる。
「何だよ、目覚まし時計をセットしてるのか?
 でもおかしいな。外はまだ、夜じゃねぇか!俺は眠いんだよ馬鹿やろう!」
まだ寝ぼけているのか、テルは緊迫した現状に気付いていなかった。
「なに言ってんだよ、テルさん!今はそれどころじゃ……テルさん?」
hydeは、異変に気付いた。
警告音の発信元が、異常に近いのだ。
しかもそれは、テルの体内――頭の中から聴こえている。
「まさか……陽水さん!テルに何をしたんだよ!?」
hydeの追及に、猪木は落ち着いた調子で答える。
「テルに限った事ではない。君達には、眠っている間に、『装置』を埋め込ませてもらった。
 なあに、最新技術を駆使したマイクロサイズの物だ。違和感は感じないだろう?
 それから、これには位置特定の為の発信機と、自爆装置がセットされている。
 指定の制限時間をオーバーしたり、プログラムの進行を著しく妨害した場合には……」 「場合、には……」
hydeは、唾をゴクリと呑んだ。まさか……まさか、そんなことって……
そして、一番聴きたくない言葉が、陽水の口から発せられた。 「爆発する」

8 :[1日目午前0時スタート前後:武道館]:01/12/10 22:52 ID:DKcUYppD
ピピピピピピピピ……
警告音の間隔が短くなってゆく。
悪魔のカウントダウンに、静かだった会場が再びざわつき始めた。
しかし、当のテル本人は、まだこの危機的状況に気付いていなかった。
「みんな起きているのかよ!うるせえよ時計……誰かとめろよな!GLAYが一番ロックなんだよ!」
hydeはパニック寸前だった。
親友の命が、あと数秒で消えてしまうかもしれない。
しかし、自分にはそれを止める術が無い。 「テル……テルさん……」
hydeは、とっさにテルの両手を強く握った。 涙がこぼれ落ちて、止まらない。
その涙が、テルの頬へと落ちて行く。「ずっと……ずっと、友達だよ……」
まだ通常の判断力が戻っていないテルには、何故hydeが泣いているのか、解らなかった。
しかし、「友達だよ」という言葉だけは、はっきりと聞こえた。
「おい、なに言ってんだ!俺とお前はずっと親友だぜ!」
テルは、いつものように微笑んだ。 その直後――
ぱんっ、という音とともに、テルの側頭部が弾けた。
hydeの顔が返り血を浴び、真っ赤に染まる。
瞬間、教室中が再び悲鳴に包まれた。
人の命が奪われた瞬間を目撃した以上、それは矢沢の時とは比較にならない状況だった。
「お前ら!静かにしないか!」
陽水の忠告も、もはや届かない。
ある者は泣き叫び、ある者は気を失い、ある者は何度も嘔吐を繰り返した。
そんな混沌とした中、hydeはテルの手を握ったまま、動かなかった。
いや、動けなかった。
呆然としたまま握っているテルの手には、まだ、温もりが残っていた。
「まだあったかいぜ、テルさん……」

9 :[1日目午前0時スタート前後:武道館]:01/12/10 22:52 ID:DKcUYppD
「威嚇射撃!」
陽水の号令が飛んだ。
それに合わせて、兵士達が一斉に床へ向けてマシンガンを発射する。
ただならぬ轟音とともに、床面のコンクリートが削られ、破片が宙に舞う。
圧倒的な『実弾』の恐怖。
その威力の前に、泣き叫んでいたミュージャン達の動きが一瞬にして止まった。
そして、数秒間の掃射が終わる直前――
床に跳ね返された弾の一発が、桑田佳祐の左膝をかすめた。
「痛ェ!」
桑田は傷口を押さえ、その場にうずくまった。
「――桑田さん!!」
その様子を見たトータス松本が、慌てて桑田のもとへと駆け寄る。
「大丈夫ですか!?桑田さん!」
トータスはそう言うと、ポケットからハンカチを取り出し、それを桑田の膝へと巻き付けた。
手際の良い応急処置だ。
「大丈夫だ。かすり傷だから……ありがとう」
桑田は苦痛に顔を歪めながらも、松本に礼を言った。
確かに、弾は膝をかすめただけだった。
あと数ミリずれていたら、確実に骨を砕き、歩く事さえ出来なかっただろう。
しかし、弾を受けた際の痺れと出血は、普段の『かすり傷』とは比較にならないものだった。
教室が『一応の』平静を取り戻した所で、再び陽水が話し始める。
「まったく、お前達は……これ以上、俺の手で参加者を減らしたくない。
 しかしまぁ、驚くのも無理はねえか。 」

10 :[1日目午前0時スタート前後:武道館]:01/12/10 22:54 ID:DKcUYppD
この時、スガシカオは状況を整理し、理解するのに必死だった。
自分は『プログラム』に選ばれた。
間違いなく、『真のミュージシャン』をめぐる戦いだ。
ここにいるミュージャン達と、命を賭けて。
テレビで見慣れた人や、親友……
今、隣で震えている中居正弘とも、戦うかもしれない。
そんな、そんなこと……わからない、どうすればいいんだ……
冷静な判断をする為に、現状を整理するつもりだった。
しかし、考えれば考える程、気持ちは混乱してゆく。
頼む、誰か、助けて……
だが、そんなスガの願いを無視するように、陽水の宣誓が響き渡った。
「ではこれより、プログラムを開始する!
 制限時間は三日間。日本武道館半径10キロ、都心全域が戦闘エリアとなる。
 勿論、市民の退避は完了している。
 お前達の両親にも既に連絡済だ。後悔の無い様、思う存分やりたまえ!」

11 :[1日目午前0時スタート前後:武道館]:01/12/10 22:55 ID:DKcUYppD
出発の順番はランダムだった。陽水がくじ引きで決めていた。
民生が用意した箱の中に陽水が手を入れ、1枚の紙を引く。
「それでは、最初に出発する者の名前を発表する……平井堅くん」
全員の視線が、彼に集中する。
「は、はいッ!」
平井堅は、上ずった声で返事をし、立ち上がった。
そして、顔を強張らせながら教室の出口へと進む。
「私物の持参は自由だが、くれぐれも『お荷物』にならないよう、注意しろ。
 それから、出口で支給するデイパックには、武器がランダムで入っている。
 有効に活用し、円滑にプログラムを進めて貰いたい。以上だ」
平井は出口でデイパックを受け取ると、会場内へ向き直り、深々と一礼をした。
そして、一目散に外へと駆けて行く。 次の参加者の出発は2分後だ。
皆一様に怖がっていたが、中には「やる気」になっているミュージャンがいるかもしれない。
教室では、2番目に出発するミュージャンの名が呼ばれた。
「それでは、次、……トータス松本くん!」
松本は「はいっ」と返事をして立ち上がったものの、一歩が踏み出せない。
「大切な人達」のことが気になって、傍に居たくて、仕方なかった。
拓郎は泣き止んでこそいたものの、ずっと俯いたままだ。
そして桑田は、傷を負った左足を、ずっと押さえている。
どうしよう……ふたりを放って行くなんて、出来ない……
迷う事が許されない状況の中、松本は出発すべきか迷っていた。
その時、なかなか動こうとしない松本に気付いた桑田が、微笑みながら声を掛けた。
「松本……俺なら、大丈夫だから……」

12 :[1日目午前0時スタート前後:武道館]:01/12/10 22:55 ID:DKcUYppD
「桑田さん……」 松本の瞳が、徐々に潤んでくる。
桑田とは離れたくない。でも、離れなければならない。
そして桑田の言葉は、別離への選択を迫る言葉。
わかってる。わかってるけど、その一歩がどうしても踏み出せない。
「松本、早くしろ!」 陽水は冷徹に、出発を促す。 「はい……」
松本は力無く答えた。しかし、まだ歩き出す事は出来ない。
その時――
桑田がスッと立ち上がると、突然、松本を力いっぱい抱きしめた。
「く、桑田さん……?」
松本は動揺を隠せなかった。「桑田さん、どうしたんですか?急に……」
そして桑田は、いつもにも増して、優しく語り掛ける。
「松本……諦めちゃ駄目だ。諦めたら、すべてがそこで終わってしまう……」
「桑田さん……」 松本の瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
桑田は抱きしめた両手をほどくと、じっと松本の顔を見つめる。
松本を見る桑田の表情は、普段と変わらない、優しい笑顔だ。
(どうして桑田さんは、そんな優しい笑顔を見せるんだ?
 三日後にはもう、二人共この世にいないかもしれないのに……)
桑田は言葉を続けた。
「よくわからないけど……必ず、何か方法があるはず。みんなが助かる方法が……
 だから、そんなに悲しい顔をするな。 」
今のトータス松本に、笑顔を作る事は不可能だった。
だが、桑田佳祐の言わんとすることは、しっかりと伝わっていた。
「わかりました……拓郎さんにも、一言、掛けてあげてください」
松本はそう言うと、出口へ向かって歩き始めた。
そしてデイパックを受け取り、それを確認すると、夜の闇へと走り去って行った。

13 :[1日目午前0時スタート前後:武道館]:01/12/10 22:56 ID:DKcUYppD
出発の点呼は続く。 次いで、hydeの名が呼ばれた。
しかし、hydeは何の反応も示さない。
あの時からずっと、テルの手を握ったままだ。
「ハイド、早くしろ!コノヤロウ!このままだと、プログラムの進行を阻害するものとして、
 お前を排除するぞ!コノヤロウ!」
陽水から最後通告が発せられた。
それに反応するように、ようやくhydeが動き出す。
hydeの手から、テルの手が離れた。
「テルさん……じゃあな、行って来る。待ってろよ……」
hydeは俯いたまま、返り血を拭う事もせず、ゆっくりと立ち上がる。
そして、会場の出口ではなく、猪木陽水の居るステージへと向かった。
数秒後―― パシッ、
hydeの平手打ちが、陽水のあごを捉えた。
兵士達が一斉にhydeに向け銃を構えるが、陽水がそれを制止する。
陽水は叩かれたあごを押さえつつ、じっとhydeを見た。
hydeの瞳は、さっきまでの無気力さが消え、怒りに満ちていた。
「絶対に……絶対に、許さねえぞ!」
hydeはそう言い放つと、足早に出口へと向かう。
意外なことに、陽水はhydeを咎める事もせず、ただじっとhydeの様子を見ていた。
出口へ向かう途中、再びシートが被せられた矢沢永吉の死体の前で、hydeは足を止める。
矢沢はhydeにとって尊敬する先輩であった。
この短い時間の間に、自分の好きな人が相次いで去って行く。
しかも、明らかに『見せしめ』として殺された……
具体的な策がある訳ではなかった。
しかし、hydeの心の中には、井上陽水に対する復讐心が沸々と湧き上がっていた。
「矢沢さん……拓郎さんを、守ってあげてくれ」
hydeはそう呟くと、デイパック受け取って教室を去って行った。

14 :[1日目午前0時スタート前後:武道館]:01/12/10 22:56 ID:DKcUYppD
その後の出発は順調だった。
順調といっても、”トータス松本やhydeと比べたら”というレベルではあったが。
目眩を起こして倒れていた河村隆一は、歩くことがやっとだった。
吉田拓郎も、桑田佳祐に促され、力無く教室を後にする。
その桑田も、左足を微妙に気にしながら、出発して行った。
一人、また一人と、教室から参加者が消えて行く。
そして、スガシカオの番がやって来た。
勿論、行きたくなんかない。
しかし、この場で抵抗しても無駄なのは判っている。
(行くしか、ないんだな……)
名前を呼ばれ、立ち上がろうとするスガ。
と、そのスガの右腕を、中居正弘が掴んだ。
「シカオさん……大丈夫だよな。みんな、人を殺したりなんか、しないよな……」
中居の顔は蒼ざめ、恐怖と不安に震えている。
「中居くん……大丈夫だよ」
スガは優しく語り掛けた。
怖がりな中居の心を、少しでも落ち着かせなければ……
「みんな大丈夫。そんな簡単に、人を殺すことなんて――」
スガがそう言い始めた瞬間だった。

15 :[1日目午前0時スタート前後:武道館]:01/12/10 22:57 ID:DKcUYppD
パンッ、パンッ、パンッ、
乾いた銃声が、外から聞こえてきた。
残っていた全員が、ビクッ、と肩を震わせる。
誰もが信じられなかった。
(まさか、本当に「やる気」になっている奴ががいるの!?)
「嫌だー……こんなの、嫌だーーー!!」
中居は耳を塞ぎ、激しく首を横に振る。
スガの言葉に、わずかでも希望を持とうとした矢先の銃声。
容赦ない現実が、中居の希望を一瞬にして打ち砕いていった。
「中居くん……正面ゲートで待ってるから!」
スガはそう言い残すと、デイパックを受け取り、会場を出た。
恐怖に震える中居を、このまま放っておくことなど出来ない。
だからといって、迂闊に外で待ち合わせるのは危険だ。
さっきの銃声は、入り口の辺りから聞こえてきた。
標的にされる可能性が高すぎる。
次に出発するのは、中居。
武道館入り口付近の控室辺りで待っていれば、安全かつ迅速に中居と合流出来る筈。
靴だけ取りに行って、裏口から出よう……
スガはそう考えた。
しかし、それが悲劇の始まりだとは、この時、スガシカオは知る由も無かった。

16 :名無しのエリー:01/12/10 23:50 ID:Cpm4rMvK
age

17 :・・・:01/12/11 02:47 ID:Ejgix6hA
おもろいあげ。

18 :名無しのエリー:01/12/11 02:51 ID:3eLp37D9
まともに読んでもいないのにオナニーと決めつける私は糞ですか?

19 :[1日目午前0時スタート直後:控室付近]:01/12/11 12:39 ID:MtgH/6SB
正面ゲートに、人の気配は感じられなかった。
武道館の入り口までの十数メートルの間にも、動くものは見当たらない。
スガは慎重に周囲を警戒しつつ、入り口に一番近い自分と中居の控室へ向かった。
今自分たちが履いていた靴は、普通のものではなくてステージ専用であった。
まず中居の靴を回収し、次いで自分の靴を回収すべく、下駄箱へ。
だが、自分の靴に手を伸ばした時、スガはふと思った。
そうだ。
何故わざわざ、靴を取りにここへ来たのだろう。
今は非常時だ。
小学校の防災訓練の時だって、上履きのまま外へ出るのが当り前の筈。
悠長に靴を履き替えて逃げる人なんて、居やしない。
一刻を争うというのに、どうして、こんなことを……

20 :[1日目午前0時スタート直後:控室付近]:01/12/11 12:39 ID:MtgH/6SB
危機感の欠如
それは、参加者の誰もが同じだった。
火事や地震と違い、殺し合いという状況に備えている人間などいない。
しかも、今まで出発した参加者には、主催者である井上陽水以外への殺意は、感じられなかった。
誰も人を殺すなんて、出来やしない。
とりあえず外へ出れば、何とかなるだろう。そう思っていた。
だが、そんな淡い期待は、さっきの銃声によって打ち消された。
信じたくは無いが、既に殺し合いは始まっている。

21 :[1日目午前0時スタート直後:控室付近]:01/12/11 12:46 ID:MtgH/6SB
とにかく、ここまで来てしまった以上、早く靴を取って戻ろう――
スガは心の中でそう呟くと、控室内の下駄箱から自分の靴を取り出した。
その時だった。
カチッ、という金属音とともに、何かが引っ掛かる感触が伝わって来る。
靴や下駄箱の構造上、引っ掛かる物があるとは思えない。
嫌な予感がした。
暗がりの中、スガは下駄箱の中を覗き込む。
そこには、ガムテープで固定された丸い物体が、一つ。
そして靴には針金が巻かれ、その先にはピンを思わせる金属部品が結び付けられていた。
――手榴弾だ!
しかも、靴を取り出したことにより、ピンは外れている。
仕掛けた人物を詮索する時間など無い。
スガは全速力で、その場から立ち去るべく走り出した。
だが、運命は脱出を簡単に許してはくれない。
走り出したスガの眼前に、突然、人影が現れた。

22 :名無し:01/12/11 12:55 ID:SUwvDE31
http://ad2ch.tripod.co.jp/honpen1-1.html

23 :名無しのエリー:01/12/11 13:07 ID:8EK07luq
読みにくい文章・・・つまんないのでもうやめたら?

24 :[1日目午前0時スタート直後:控室付近]:01/12/11 14:39 ID:ynv7eyWL
肩がぶつかった。
足がもつれ、スガは廊下へと倒れ込む。
バッグと靴が、勢い良く床を転がって行った。
……誰だ!?
スガは下駄箱の方向へと振り返る。
そこには、虚ろな目をした一人のミュージャンが、ぼんやりと立ち尽くしていた。
エレファントカシマシの宮本浩次
今の宮本には、普段の感じが微塵も感じられない。
当然だ。
今は殺人ゲームの真っ只中なのだから。
……だが、それ以上に、今の宮本の様子がおかしい。
彼は腹部を手で押さえている。
そしてその手は、赤黒い血液に濡れていた。
「シカオさん……俺、撃たれちゃったよ。どうしよう……」
宮本は、声を絞り出すようにして、語り掛ける。
その声は震え、息も荒い。
どんな素人が見ても、致命傷を負っている事は明白だった。
(どうしよう、って……)
スガは答えられなかった。答えられる筈もなかった。
手榴弾を発見し、そして傷付いた宮本と遭遇するまで、ほんの数秒間。
突然すぎる恐怖と衝撃の連続に、スガの思考回路はパニックに陥っていた。


25 :[1日目午前0時スタート直後:控室付近]:01/12/11 14:40 ID:ynv7eyWL
「……逃げろっっ!!」
スガは咄嗟に叫んだ。
そう、手榴弾のピンを引いてしまっている。
もう時間が無いのだ。
一刻も早く、ここから離れなければ――
そう思い、スガは体を起こそうとした。
その瞬間だった。
大音響とともに、宮本の背後の下駄箱が吹き飛んだ。
強力な爆風とともに、埃や破片が彼ら達に降り注ぐ。
そして、その中でもひときわ大きな金属片が、宮本の後頭部に突き刺さった。
「ぐっ」と、宮本は小さなうめき声をあげる。
それが、彼の最期の言葉だった。
倒れ込み、動かなくなった宮本の体が、みるみる血だまりに沈んでゆく。
スガは震えながら、その血だまりが広がってゆくのをじっと見つめていた。
そうする事しか、出来なかった。

26 :[1日目午前0時スタート直後:控室付近]:01/12/11 14:41 ID:ynv7eyWL
(俺の……せい?)
(俺が、不用意に靴を取りに来たから?)
(俺が、手榴弾のピンを抜いてしまったから?)
(だから……宮本は死んでしまったのか?)

スガの心の中に、自責の念が渦を巻く。
あの爆発以前に、既に宮本は致命傷を受けていた。
自分が何もしなくても、彼は助からなかっただろう。
しかし、直接の死因は、あの爆発にある。
防ぐ事が可能だった筈の、あの爆発。
人を殺した
人を殺した
人を殺した
同じ言葉が、何度も何度も西村の頭を駆け巡る。
「違う!あれは……あれは……」
スガは頭を抱えて、泣き叫んだ。
気が変になりそうだった。
「シカオさん、しっかりしろ!」
その時、中居の声がした。

27 :[1日目午前0時スタート直後:控室付近]:01/12/11 14:42 ID:ynv7eyWL
ハッとして、顔を上げるスガ。
いつしか、スガの傍らには中居が寄り添っていた。
「中居くん……」
「シカオさん……落ち着こうよ。事故だったんだろ?宮本くんには悪いけど……運が、悪かったとしか……」
と、ここでスガは今の状況に気付いた。
自分は今、中居に慰めてもらっている。
武道館内の時とは、全く逆の立場になっているのだ。
(そうか……俺、強がっていただけなんだ……)
必要以上に張りつめていたものが、段々と緩くなってゆくのを感じた。
緊迫した状況に変わりは無いが、スガは少しずつ、冷静さを取り戻してゆく。
「中居くん……ありがとう」
スガは靴を天山に渡すと、自分も靴を履き替え、バッグを拾い上げた。
あと30分弱で、ここは立入禁止エリアになってしまう。
早くここから立ち去らなければ……
しかし、ここでまた新たな訪問者がやって来た。
「おいおい?何の騒ぎだ、これは……」

28 :[1日目午前0時スタート直後:控室付近]:01/12/11 14:42 ID:ynv7eyWL
そこに現れたのは、プロデューサーとして名高いつんくだった。
つんくは何故か、バッグ以外の荷物を沢山抱えている。
「つんくさん……どうしたんです?その荷物」
スガは目を丸くした。
確かに、私物の持参は自由というルールだ。
しかし、会場を出た時のつんくは、バッグ以外の物は持っていなかった。
「ああ、これ?ちょっと自分の控え室へ寄って、取って来たんだよ」
倉庫から取って来た荷物――
その中には、ジュラルミンケースやブリキのチャンピオンベルトなど、持てる限りのガラクタが詰まっていた。
つんくは苦笑する。
「どうせなら、最後は自分の好きな事、やりたいしな……」
最後は――
とてつもなく、重い言葉だった。
つんくに戦う意思が無いのは明白だが、この言葉は、
彼が生き残る事を放棄するとも取れるものだった。
「つんくさん……あなた、生き残りたくないんですか?『真のミュージシャン』になりたいと、思わないんですか?」
スガが問いただす。
しかし、つんくの回答は実にあっさりしていた。

29 :[1日目午前0時スタート直後:控室付近]:01/12/11 14:43 ID:ynv7eyWL
「まぁ、これに参加してる以上、気持ちが無い訳じゃない。
 でも、人殺しをしてまで、強くなってもな。後味悪いだろ。そんなとこさ。 」
「でもな……」
つんくはそう言うと、宮本の亡骸に近付き、その体からバッグを引き剥がした。
「やっぱり無駄死にはいやだな。それに……」
そしてカシンは、ポケットから拳銃を出し、構えた。
「むやみに人を信じたら、負けだぜ!」

30 :はぁウゼ:01/12/11 14:44 ID:AMCHLlJQ
そろそろ削除依頼だしていい?

31 :名無しのエリ−:01/12/11 14:45 ID:Xwh1MdXG
もー娘。バトルロワイヤル
http://www.interq.or.jp/yellow/hiuga/novel/battle.html

32 :[1日目午前0時スタート直後:控室付近]:01/12/11 14:48 ID:ynv7eyWL
それは一瞬の出来事だった。
数発の銃弾が、中居の体を貫いてゆく。
中居は、痛みを感じるより早く、着弾の衝撃によって床へと倒れこんだ。
「――中居くん!!」
スガは信じられなかった。
少なくとも、話していた時のつんくの雰囲気からは、この状況は予測出来なかった。
だが、これは現実だ。
現に中居は、つんくの放った銃弾を受け、血にまみれている。
次いでつんくは、スガにも銃口を向けた。
手を伸ばせば届く程の至近距離だ。
外すことは有り得ない。
スガは咄嗟に、自分のバッグをつんくの手めがけて振り回した。
つんくの手からグロックが弾かれ、床を転がってゆく。
その隙に、スガは倒れた中居の手を引いて、物陰へと隠れた。
「中居くん!しっかりしろ!」
スガは、苦痛に喘ぐ中居に呼び掛けながら、バッグの中の武器を探す。
つんくは銃を拾い、再び攻撃して来る筈だ。
時間稼ぎで構わない。つんくを足止め出来る武器を……スガは祈った。
つんくは廊下の端まで転がった銃を拾い上げると、スガたちが隠れた物陰へと歩を進ませる。

33 :[1日目午前0時スタート直後:控室付近]:01/12/11 14:49 ID:ynv7eyWL
そして銃撃が始まった。
控室の中で身構えているスガと、廊下の角から銃を打ち鳴らすつんく。
スガは銃撃の恐怖に震えながら、手にした武器を天井へと掲げた。

パンッ!パンッ!パンッ!

自分の物とは違う銃声に、つんくは素早く身を隠した。
5、6メートルほどの廊下の間を双方が対峙する。
つんくがスガの出方を警戒している一方、スガの心は更に不安を増していた。
どうにかつんくを牽制する事は出来たが、それとて一時的なもの。
どうすれば……どうすればいい?
スガの手中にあるパーティー用のクラッカーは、ほんの少しだけ、熱かった。

34 :[1日目午前0時スタート直後:控室付近]:01/12/11 14:49 ID:ynv7eyWL
「つんくさん、どうして!?どうして中居くんを撃ったんだ!?人を殺したくないって言ったじゃないですか!」
スガはつんくに呼び掛ける。
時間稼ぎをしたいという思惑もあった。
だが、つんくの行動に、どうしても納得がいかなかった。
理由を聞きたかった。
「死にたくないから、やっただけだ。……宮本を殺したんだろ!?
 あいつを殺したお前達を、信用できるわけがないだろ!」
つんくは強い調子で言い返した。
誤解している。
「違う!宮本くんを撃ったのは俺達じゃない!それに、あの爆発も偶然……偶然だったんだよ。信じろ!」
だが、つんくはスガの弁明に耳を貸す事はしなかった。
「言い訳なんか聞きたくない。理由はそれで充分だろ……」
つんくが動き出した。
一歩ずつ、足音が近付いて来る。

35 :[1日目午前0時スタート直後:控室付近]:01/12/11 14:52 ID:ynv7eyWL
スガは、急いで中居のバッグを探り始めた。
もうクラッカーでは誤魔化せない。
今度こそ、武器らしい物が入っていますように……スガは祈った。
だが、祈りは届かなかった。
スガが手にした武器――それは透明プラスチックで成型された水鉄砲だった。
勝負にならない。
段々とつんくの足音が近付くなか、スガは今度こそ死を覚悟した。
ここで中居と一緒に殺される。
嫌だ。嫌だけど……
スガは生き残る事を諦めかけてゆく。
しかしその時、意外な声が玄関に響き渡った。
「お前達!道場内での戦闘は止めろ!コノヤロウ!」

36 :[1日目午前0時スタート直後:控室付近]:01/12/11 14:53 ID:ynv7eyWL
いつしか、玄関付近は井上陽水と兵士達によって包囲されていた。
「まったく、困った野郎どもだ……ここには大会本部が設置されている。
 これ以上戦闘を続けた場合、プログラムの進行を著しく妨害したものとして……」
そして猪木は、『あの』リモコンをポケットから取り出し、掲げる。
思わぬ水入りだった。
つんくは悔しそうに唇を噛む。
そしてスガは、ほっと胸を撫で下ろした。
とりあえず、差し迫っていた危機は回避出来た。
しかし、決してプログラムから解放されたわけではない。
撃たれた中居の状況も、予断を許さない。
――と、ここでスガは中居の異変に気付いた。
さっきまでの苦しそうな息遣いが聴こえない。
何事も無く、静かに眠っている様に見える。
いや、中居は寝息さえ立てていなかった。
「……中居くん?」
嫌な予感がした。
スガは慌てて中居の手を掴み、脈を測ろうとする。
……もう、中居の鼓動を感じることは出来なかった。
(うそ……嘘だろ?中居くん……)

37 :[1日目午前0時スタート直後:控室付近]:01/12/11 14:53 ID:ynv7eyWL
スガの胸に、悔しさと怒りがこみ上げてくる。
「こんな、こんなことって……法律だからって……こんなのおかしいぃ!理不尽だぁ!」
スガの嗚咽が玄関中に響き、やがて廊下や階段へと伝わって行く。
その声を聴きながら、つんくは荷物を抱え、出口へと歩き始めた。
そしてその途中、一人の男とすれ違う。
最後に出発した参加者、ポルノグラフィティーのアキヒトだ。
彼がちょうど階段を下りたその瞬間から、この銃撃戦は始まっていた。
そしてアキヒトはその一部始終を、身を隠しながら、じっと見ていた。
つんくがここでは攻撃しない(出来ない)事は判っていた。
だがそれでも、つんくが近付く度に、足が勝手に一歩、二歩と後ずさりを始めてしまう。
つんくはアキヒトとすれ違うと、ふと立ち止まり、振り返ってじっとアキヒトの顔を見た。
「フッまたな……」
つんくは寂しげな顔でそう呟くと、裏口へと駆け出して行く。
アキヒトは、ただじっとつんくを見送る事しか出来なかった。
哀しい泣き声が、いつまでも響いていた。

38 :[1日目午前1時:児童公園]:01/12/11 21:43 ID:niAIWz6r
「永ちゃん……俺、俺、……」
児童公園のベンチで、吉田拓郎は震えていた。
その震える手には、拳銃が握られている。

拓郎は出発した直後、武道館近くの茂みに身を隠していた。
立入禁止エリアになるギリギリの時間まで、矢沢の近くに居たかったのだ。
一人、また一人と、参加者が道場を出て行く。
この場に留まっていられる時間が、どんどん少なくなって行く。
拓郎は怖かった。
武道館より先の世界に出ることが、たまらなく怖かった。
(殺される。誰かに会ったら、殺される。だから守らなくちゃな。この銃で、自分を守らないと……)
支給された銃を握って、拓郎はこの言葉を何度も何度も繰り返す。
その時だった。
「あ、拓郎さんじゃないですか!どうしたんですか?」
拓郎は素早く反応する。
(見つかった!?)
拓郎は声のした方向へと向き直り、銃を構えると、引き金に力を込めた。
そこで初めて、声の主がエレカシの宮本浩次である事を知る。
しかし、宮本は拓郎に危害を加える素振りを見せなかった。
いつもの様に、むっつりしていた。
(――撃っちゃダメだ!)
拓郎は瞬時にそう思った。だが、引き金を引く指の動きは止まらなかった。
そして……

39 :[1日目午前1時:児童公園]:01/12/11 21:44 ID:niAIWz6r
拓郎は茂みから飛び出したあと、無我夢中で道路を走り回り、この公園へと辿り着いた。
だが、どんなに走り回って気持ちを紛らわせても、
宮本に発砲した時の映像が、頭の中で何度も何度もリフレインする。
「永ちゃん……俺、人を殺しちゃったよ……どうしよう……」
もはや拓郎は、俯くことしか出来なくなっていた。
と、その時――
誰かがやって来て、拓郎に声を掛けた。
「大丈夫!拓郎さん?」

40 :[1日目午前1時:児童公園]:01/12/11 21:56 ID:niAIWz6r
声を掛けたのは、ミスターチルドレン、桜井和寿だった。
「矢沢さんの事は、気の毒だったけど……まあ、元気、出しましょう」
桜井はそう言うと、拓郎の隣に腰を降ろした。
「桜井……」
拓郎は銃を構えなかった。構えられなかった。
宮本の二の舞いは避けたかったし、
優しく接してくれる人に、銃は向けられなかった。
拓郎はそっと、銃をバッグにしまい込んだ。
桜井はボサボサになっている頭をなでながら、拓郎に話し掛ける。
「ひとつ、聞いていいですか?拓郎さんも『真のミュージシャン』になれたらいいなって思っています?」
拓郎の答えは、一つしか無かった。
「そうだなぁ。。。やっぱり…出来ればそういうのになりたいな!」
拓郎は頬を赤らめる。
桜井は手を頭から外すと、今度は少し生え際が目立っている髭をいじりながら、つぶやいた。
「フッ!でも拓郎さんじゃいくら頑張っても自力でチャート一位にもなれないからね…」
(――え?)
意外な返答に拓郎は驚いた。
そして桜井は、拓郎と目を合わせる事無く、淡々と話し続ける。
「陽水さんが、民生さんと話しているのを、聞いたことがあります。
 ”拓郎ってほんとにどうしようもねいな”って、笑いながら話していましたよ」
あまりに痛烈な武藤の言葉に、拓郎は言葉を失った。
(うそ……桜井、何を言ってるんだ?嘘だろ!?)

41 :[1日目午前1時:児童公園]:01/12/11 21:57 ID:niAIWz6r
「拓郎さんは、ファンに”天才”って言って貰った事、ありますか?」
そう言うと、桜井は自分の膝をパンパン叩き出した。
「昔はいくらでも売れたんだ、俺、シングルで二百万枚でも軽く売ってた。
 音楽のクオリティーは以前にも増してるはずなのに世間は『昔の方が…』だなんてほざきやがる。
 でもやっぱり今でも俺の事”天才”って言ってくれるファンがいる……」
淡々と語る桜井の姿に、拓郎は絶望した。
慰めてくれると思っていたのに、どうして……
しかし、桜井の辛辣な言葉は止まらない。
「拓郎さん、あんたに期待しているファンなんていないんですよ。年だし!
 このプログラムに勝ち残る意味なんて、無いんですよ……」
決定的な一言だった。
「桜井……どうして、そんなひどいこと言うんだ!?」
拓郎は泣きながら訴えた。
だが、桜井はそれを軽く受け流す。
「事実だからですよ。」
桜井は拓郎の目をじっと見て、静かに微笑んだ。
口元が、すぅっ、と上にあがる。
「俺、決めたんですよ。俺のファンの為に生き残るって……」
その瞬間、拓郎は言い知れぬ恐怖感を覚えた。
体中の血の気が、一瞬にして引いて行くのを感じる。
「やめろぉおおおおおおおおーーーー!!」
吉田拓郎の絶叫が、夜の公園に響く。

ザシュッ!

42 :[1日目午前1時:児童公園]:01/12/11 21:57 ID:niAIWz6r
桜井が隠し持っていたサバイバルナイフが、拓郎の喉元を掻き切った。
血飛沫を上げながら、拓郎の体が地面へと崩れ落ちて行く。
桜井はナイフから滴り落ちる血を見つめながら、呟いた。
「拓郎さん、矢沢さんの所にいけたね…!」

43 :名盤さん:01/12/11 22:11 ID:niAIWz6r
age

44 :[1日目午前5時:町内]:01/12/11 22:13 ID:niAIWz6r
「シカオさん……ここで、別れよう……」
東の空が明るくなり始めた頃、ポルノのアキヒトが呟いた。
俯きながら力無く歩いていたスガシカオが、顔を上げる。

中居正弘が息を引き取った後、スガはその場を動こうとしなかった。
中居が死んだなんて、信じられなかった。
しかし、退去命令のタイムリミットは刻々と迫って来る。
アキヒトは、中居の傍を離れたがらないスガを何とか説き伏せ、道場外へと連れ出した。
無駄に死人が増えるのだけは、嫌だったから。

45 :[1日目午前5時:町内]:01/12/11 22:13 ID:niAIWz6r
「シカオさん……俺、分からないんです……」
アキヒトは目を伏せながら、話し始めた。
「シカオさんのこと、放っておけなくて、連れ出したけど……
 でも本当は、迷ってるんです。プログラムに乗るべきなのか、抵抗するべきなのか……」
アキヒトの唇が、微かに震えはじめる。
「勿論、人殺しなんてしたくない。でも、誰かに殺されるのも嫌だ……
 生き残る選択肢が一つしか無いのなら、それに乗るのも、仕方ないのかな、って……」
二人の周囲を、霧が覆いはじめた。
少し肌寒い空気の中、互いの目を見つめる二人。
沈黙の時間が、流れて行く。
「……スガシカオさんみたいな素晴らしい人が近くにいたら、俺、冷静に今を判断出来ないんです。
 答えを出せないまま、感情に流されるまま……あなたを殺してしまうかもしれない。だから……」
そしてアキヒトは、銃を構えた。
サイレンサーを装備したベレッタM1934コマーシャルが、スガの顔に向けられる。
「だから、ここで別れよう……俺の気が変わらないうちに、行ってください」

46 :[1日目午前5時:町内]:01/12/11 22:14 ID:niAIWz6r
「アキヒトくん……」
スガは動揺しつつも、アキヒトを諭そうと、言葉を続けようとした。
しかし次の瞬間、アキヒトの放った銃弾が、スガの頬の数センチ先をかすめて行く。
スガの髪が数本、空中に散った。
「お願いです、行ってくれ!俺は……中居くんの代わりには、なれないんだから……」
それを聞いて、スガは言葉を続けられなかった。
(そうだ。独りになるのが、怖かったんだ……)

スガの脳裏に、プログラム開始時からの記憶が蘇る。
プログラムが始まってから、ずっと傍には中居がいた。
そして中居の存在が消えた瞬間、独りになるのが不安で、何も出来ない自分がいた。
アキヒトに付いて行ったのも、タイムリミットが怖かったからじゃない

47 :[1日目午前5時:町内]:01/12/11 22:14 ID:niAIWz6r
無意識のうちにアキヒトに負担を掛けていた事に気付き、スガは自分の不甲斐無さを嘆いた。
「わかった……辛い思いをさせてしまって、ごめん……」
スガはそう言うと、スッ、と踵を返す。
「でも、出来るなら……」
アキヒトに背を向けながら、スガは語り掛けた。
「人は殺さないでくれ。そして……決して希望は捨てないでくれ。お願いだから……」
それはアキヒトに対してだけでなく、自分自身にも言い聞かせる為の言葉だった。
「……努力します」
アキヒトは消え入りそうな声で返事をする。
頭では解っていたが、それを実行出来る自信は、今の彼には無かった。
「それじゃ……元気でな」
その言葉を残し、スガは霧の中へと駆け出して行く。
そしてスガの姿が見えなくなると同時に、アキヒトはその場に座り込んだ。
「何やってるんだろう、俺……自分から立ち去れば、それで済んだのに……」
銃を持ったアキヒトの指先は、ずっと震えたままだった。
霧は益々、その深さを増して行った。

48 :soud:01/12/11 22:22 ID:I/46sEFe
ごめんもういいや。

49 :名無しのエリー:01/12/11 22:27 ID:XyLIRoXr
結局、桜井が大量殺人してシカオに殺されて終わりでいいじゃん。

50 :名無しのエリー:01/12/11 23:11 ID:7PFQ1YHi
ってか名前変えただけのコピペでしょ?
時折猪木とかカシンとか出てくるし。

51 :  :01/12/12 17:13 ID:FEAuud1C
SMAP代表が中居か…。
歌唱力は関係ないのね。

52 :[1日目午前6時前:公園]:01/12/13 13:39 ID:c0IHrm3a
朝霧の中、スポーツウェアに身を包み、平井堅は走っていた。
どんな非常時といえど、毎朝のジョギングを欠かす事は出来なかった。
いや、そうしなければ、落ち着かなかった。
誰かを殺すか、誰かに殺されるか……
嫌な選択肢しか残されていない現状を、忘れたかった。
平井は出来る限り、プログラムの事を忘れようと懸命だった。
しかし公園に入った時、平井は現実に引き戻される。
濃い霧の先に、誰かが立っている……
平井は走るのを止め、警戒しつつ、霧中の人物に声を掛けた。
「誰だ?そこに居るのは……返事をしろ!」
そして数秒後、聞き慣れた声で返事が帰って来る。
「いい朝だな・・・平井君!」
SOPHIAの松岡充の声だ。

53 :[1日目午前6時前:公園]:01/12/13 13:40 ID:c0IHrm3a
親しい知人の声に安心した平井は、警戒を解き、松岡に近付いて行く。
「無事だったんだ、松岡さん……怪我はしてないか?大丈夫?」
「まあな。一応、生き延びてる」
普段通りの明るい声で、松岡は答えた。
(良かった……元気そうだ)
平井は、心が許せる人と再会出来る喜びを噛み締めていた。
たった数時間しか離れていないのに、数週間振りに会うような感覚。
緊張していた心を、ようやく落ち着ける事が出来る……そう思っていた。
だが、松岡にあと2〜3メートルまで近付いたその時、平井は自分の目を疑った。
霧の中から現れた松岡は、平井に銃口を向けている。
「悪く思うなよ、平井」
そうつぶやく松岡の表情は、冷静だった。
「――どういうつもりだ!?松岡さん……」
平井は動揺を隠し切れない。
しかし、松岡はあくまで冷静に、言葉を続ける。
「動かないでくれ……弾が外れるから」

54 :[1日目午前6時前:公園]:01/12/13 13:41 ID:c0IHrm3a
「本気……なのか?」
平井は信じられなかった。
松岡が自分に銃を向けるなんて、嘘だ。こんなの嘘だ……
しかし、松岡は銃を下ろさない。
「ああ本気だ。友達だからこそ、俺はお前を撃つ……」
「どういう事だよ、それは――」
と、平井が言いかけた所で、何処からとも無く大音量で音楽が流れて来た。
井上陽水の『少年時代』だ。
そしてそれに続いて、井上陽水の声が聴こえて来る。
「元気ですかーー!朝6時になった。それではこれより、
 現在までに脱落した参加者の名前を発表しよう。よく聞いておくようにな」
それは、6時間毎に流される定例放送だった。
二人は動きを止めたまま、その放送に聞き入る。
「これまでに脱落したのは、GLAYのテル、エレカシの宮本。
 SMAPの中居正広。そして、吉田拓郎……以上4名だ。
 お前ら、頑張れ。また6時間後に会おう!ダーーーーー!」
『少年時代』が、フェードアウトしてゆく。
そして平井は、その放送内容に愕然とした。
「もう……もう4人も死んだっていうのか!?」

55 :[1日目午前6時前:公園]:01/12/13 13:41 ID:c0IHrm3a
「そうだな。もう殺し合いは避けられない。
 お前もいつ、誰に殺されるかわからない…。
 ……お前が他の誰かに無惨に殺されるのは、嫌なんだよ。
 だから、親友として、俺はお前を楽に死なせる義務がある……」
松岡の言葉に同意出来る筈はなかった。
しかし、銃口は自分に向けられている。
このまま死ぬのは嫌だ……平井はそう思った。
平井はフッ、と溜め息をつくと、挑戦的な目つきで松岡を見て、言った。
「……で、俺の都合はお構いなし、ってわけか?」

56 :[1日目午前6時前:公園]:01/12/13 13:42 ID:c0IHrm3a
「そりゃあSOPHIAの松岡充が殺してくれるなら、少しはドラマチックかもしれない。
 でもな……俺だって、死にたくないんだ。それに……」
平井はそう言うと、背中のバッグから日本刀を抜いた。
「どうせなら、正々堂々と勝負しようじゃないか。
 いきなり銃を構えて現れるなんて、ずるいぜ……」
平井の目に、迷いは無かった。
(ただ黙って殺されるくらいなら、俺は闘う事を選ぶ。
 たとえ相手が、松岡であろうとも……後悔はしない!)
松岡は、そんな平井の姿を見て、微笑んだ。
「……堅らしい答えだな。オーケー、じゃ、始めようか!」
平井は汗ばむ両手を気にしながら、刀を構え直す。
「やるからには、全力でいくからな……」
「もちろんだ。堅!行くぞ!・・・」

パンッ、パンッ、パンッ。

57 :[1日目午前6時前:公園]:01/12/13 13:42 ID:c0IHrm3a
銃声が、公園の鳩の群れを飛ばした。
桑田佳祐が、驚いて空を見上げる。
銃声は、断続的に鳴り響いていた。
「また、誰かが戦ってる……どうすればいいんだ?なあ、拓郎さん……」
桑田はそう呟きながら、吉田拓郎の遺体の血を拭っていた。
通りがかりに偶然見つけた拓郎の体を、そのまま放置しておく事が出来なかった。
地面からベンチへとその体を移し、丁寧に両手を組ませる。
首の傷口さえ見なければ、それは本当に眠っているようにも見えた。
桑田は、離れ離れになった親友の事を思う。
「松本……大丈夫かな?それに、桜井くんも……
 早く桜井くんと合流出来れば、良いんだけどな……」
拓郎殺しの張本人が桜井である事を、桑田は知る由もなかった。

58 :[1日目午前6時前:公園]:01/12/13 13:44 ID:c0IHrm3a
「やっぱり、無茶だったかな……」
木陰で、平井がつぶやいた。
戦闘開始の合図とともに、平井は並木道の方向へとダッシュした。
銃が相手では、日本刀といえど勝ち目は無い。
しかし、この濃霧を味方に付ければ、まだ勝算はある。
松岡の放つ銃弾を辛うじて避けながら、平井は街路樹の陰で機会を窺っていた。
霧の中から、松岡の影が近付いて来る。
こちらから打って出るには、弾切れの瞬間を待つしかない。
危険な賭けだ。
だが、それしか手段は思い浮かばない。
平井は意を決して、木陰から飛び出した。
「さあ、当ててみな!」
松岡が少しぼやけて見える位置で、平井は叫んだ。
多少距離があるとはいっても、充分射程距離内だ。
松岡は平井に向け、数発連射する。
しかし、霧で視界が悪いのに加え、平井はあっという間に別の木陰へと移動してしまう。
「堅!正々堂々と闘うんだろ?コソコソ隠れて鬼ごっこだなんて、お前らしくないぞ!」
少し不機嫌そうな口調で、松岡が呼び掛ける。

59 :[1日目午前6時前:公園]:01/12/13 13:45 ID:c0IHrm3a
しかし、平井は動じない。
「正面で一騎打ちをする事が、全てじゃないぜ。
 武器の性能差を考えた上で、ベストな戦法だと思うけどな……」
平井はそう言うと、松岡との距離を確認しつつ、もう一度、木陰から飛び出した。
(そろそろ弾が切れてもいい頃だ。チャンスは逃すな!)
自分にそう言い聞かせ、平井は数本先の並木へとダッシュする。
しかし、回避出来ると思っていた弾の一発が、平井の左肩を捉えた。
「くっ!!」
どうにか木陰には辿り着いたものの、かつて経験した事の無い痛みが、全身を襲う。
左手が流血で染まり、握力がみるみる落ちて行く。
平井は肩口をスポーツタオルでギュッと縛り、一応の止血を施した。
しかし、血は止まりそうに無い。
「そろそろ……勝負時かな……」

60 :[1日目午前6時前:公園]:01/12/13 13:45 ID:c0IHrm3a
松岡の足音が近付いて来る。
もはや、弾切れを待っている余裕など無い。
ほんの一瞬でいい。松岡の動きを封じる事さえ出来れば……平井は思考を巡らせる。
そして、平井は背中のバッグを下ろした。
陰からそっと顔を出し、つんくとの距離を見る。
(――届く!)
平井は心の中でそう叫ぶと、バッグを松岡の真正面へ向けて投げつけた。
松岡の目線に、突然、バッグが飛び込んで来る。
反射的に銃を構え、松岡はそのバッグに銃弾を撃ち込んでゆく。
空中でバッグが二度、三度と踊った。
そして、踊り疲れたバッグが引力に引かれ始めたその瞬間――
バッグが作った死角から、平井が一気に飛び込んで来る。
バッグに気を取られていた松岡は、予想外の進撃に反応出来ない。
平井は低位置から松岡の懐に入り込むと、刃を180度返し、
渾身の力を込めてそれを拳銃に叩き込んだ。
「とぉりゃあああああっ!!!」

ガキィィィン!!

61 :[1日目午前6時前:公園]:01/12/13 13:46 ID:c0IHrm3a
金属音と共に、松岡の拳銃が宙を舞い、繁みの中へと落ちて行く。
激痛に近い手の痺れに、松岡は思わず顔を歪めた。
(……銃を弾かれた……)
そんな自戒の言葉が、松岡の脳裏をかすめる。
だが、状況はそんな反省の時間も与えてはくれない。
平井は間髪を入れず、松岡に斬りかかって来る。
松岡は辛うじて、平井の斬撃を避け続けた。
しかし超速の刃は、松岡の頬や服を、何度も薄く切り裂いてゆく。
そして、路上の小石が松岡の足元をすくった。
(嘘だろ!?ここで、もう終わりなのか?……)
自分の体が宙を舞った瞬間、松岡は自分の周囲がスローモーションになってゆくのを感じた。
そして、尻餅をついて倒れた松岡の顔面に、鋭い切っ先が突き付けられる。
平井は、真剣な眼差しで呟いた。
「さあ、これで終わりだ」

62 :[1日目午前6時前:公園]:01/12/13 13:46 ID:c0IHrm3a
平井の勝ちは明白だった。
だが、平井はなかなかとどめを刺そうとしない。
「どうしたんだ……どうして殺さないんだ?」
松岡が尋ねる。
「どうしてかな……覚悟を決めた筈なのに、まだ、怖いのかもな……」
さっきまで冷徹だった平井の顔に、苦笑いが漏れる。
「……堅、ひとつ聞いていいか?」
「何だ?」
「あの時、どうして逆刃で銃を叩いたんだ?右手ごと切り落とした方が、簡単なのに……」
松岡は不満だった。
全力で闘うと言われながら、手を抜かれた……それが納得出来なかった。
「ああ、あれか……あくまでもSOPIAの松岡充の今後を考えたら、腕は切れないよ――」
松岡は、平井の言葉が理解出来ない。
(どうしてだ?もうすぐ死ぬ人間に、どうして今後の心配なんてするんだ、堅……)
「――だって、ギターが天国で出来なくなっちゃうだろ?だから……」

平井のその言葉が、松岡の胸を締め付ける。
「堅……お前は馬鹿だ。大馬鹿だよ……」
松岡の頬が、涙でぬれる。
「そんな……余計な心配しなければ……死なずにすんだのに!」

63 :[1日目午前6時前:公園]:01/12/13 13:47 ID:c0IHrm3a
松岡は左手で刀を払いのけると、右手でポケットから何かを取り出し、平井に押し当てた。
途端、平井の全身に凄まじい衝撃が走る。
刀が手から離れ、立っていられない程の脱力感が、全身を襲う。
「そうか、電気、か……」
意識が朦朧とする中、平井は松岡の右手に握られた武器を見た。
それはスタンガンだった。
松岡はもう一度、平井に電撃を仕掛ける。

64 :[1日目午前6時前:公園]:01/12/13 13:48 ID:c0IHrm3a
そして気付いた時、平井の眼前には、刀の切っ先と、それを構える松岡の姿があった。
「形勢逆転だな、堅……」
「ああ、そうみたいだな……」
平井は微笑んだ。そして次の瞬間、意外な言葉を口にした。
「なあ、松岡さん……このまま、とどめを刺してくれないか?」
松岡の手が、一瞬、震える。
「え?な、何言ってるんだよ。俺はそのつもりで、こうしているんじゃないか……今更、何を……」
「……そうだよな。殺し合い、だもんな」
「でも、どうしてだ……さっきは『俺だって、死にたくない』って言ってたくせに……」
松岡の問いに、平井は淡々と答える。
「……もうこれ以上、このキャラを続けたくないんだ」
「キャラ?」
「そう。俺は今まで『音楽界のテロリスト』とか『Jポップの核弾頭』とか、色々と言われ続けてきた。
 良い意味でも、悪い意味でも……露骨に嫌う人も、多かった。
 メディア上のキャラって言えば、それまでだけど……偏見に満ちた目で俺を見る人は、
 結構多かったんだ。 松岡さんは知っているよな……俺の本当の性格……
 もし万一、このプログラムで生き残ったとして……
 やっぱり、俺を『人殺し』って言う人は、他の歌手より多いと思う。そういうキャラだからね。
 ……これ以上、親に迷惑を掛けたくないんだ。だから……頼むよ」

65 :[1日目午前6時前:公園]:01/12/13 13:49 ID:c0IHrm3a
松岡は動揺していた。
平井を殺す事が、自分の役目だと信じていた。
そして平井本人も、それを希望している。
躊躇する理由など無い筈なのに、踏み出せない自分がそこに居る。
さっきは銃を撃つ事は出来たのに、どうして今は殺せないのか?……
「松岡さん……怖いんだね。きっとそれは、銃と刃物の違いだよ。
 銃は所詮、弾の反動しか手元に返ってこない。でも刃物は違う。
 相手の感触が直に伝わるから、命を奪う感覚が直に伝わるから……怖いんだ。それを解って欲しいんだ。
 唯一、俺にやさしく接してくれた松岡さんに生き残ってもらいたい、だから……」
平井はそう言うと、刀の切っ先を自分の喉元に当てた。
松岡は俯き、大粒の涙をこぼす。
「……じゃあな、堅……」
そして松岡は、刀を握る手に力を込めた。
さっきには感じなかった嫌な感覚が、掌に伝わって来る。
路上に拡がる血溜まりを見ながら、松岡は泣き崩れた。

66 :名無し:01/12/13 14:49 ID:44U7SdOf
>>60

>陰からそっと顔を出し、つんくとの距離を見る。
・・・つんく?

67 :名無しのエリー:01/12/13 22:19 ID:pRPD7H/F
応援してます
荒らされないようにsage

68 :名無しさん:01/12/13 23:55 ID:f+iLbs0H
ファンです
このまま消えてしまわぬようにage

69 ::01/12/14 10:37 ID:pQxAuFcX
すんません、もともとプロレス板からのパクリなんで。
>>66
途中で人物変えたからそこらへんのミスは見逃してくんさい。

70 :[1日目午前6時過ぎ:駅]:01/12/14 10:59 ID:pQxAuFcX
「なあ、テルさん……テルさんの仇を討つには、どうすればいいんだ?」
駅の待合室でバッグの中身を確認しながら、hydeが呟く。
あの惨劇から数時間……hydeは当ても無く市内を彷徨っていた。
「絶対に許さないぞ!」と啖呵を切って出発したものの、何をしたら良いのかが全く分からない。
ただ、確実に言えるのは『途中で死んだらダメ』という事だけ。
既に此処へ来るまでに、何人もの死体を見てきた。
(あいつらの様には、なりたくない。途中で死んでしまったら、テルさんの仇が討てない。
 絶対に……絶対に生き残って、井上陽水をこの手で殺すんだ――)
例えようの無い強力な復讐心が、hydeを動かしていた。
hydeはパンやミネラルウォーターといった食料を確認すると、バッグから武器を取り出した。
『当たり』と言っても良いだろう。小型のマシンガン、マイクロウージー9ミリだ。
「ラッキーだ。これなら何とか生き残れそうだな」
hydeの顔に、安堵の笑みが漏れた。
添付されている簡単な説明書を見ながら、hydeは操作手順を確認する。
そして、弾倉を差し込もうとしたその時――
形状が違う。
何度差し込もうとしても、はめ込みが上手くいかない。
hydeは慌てて予備の弾倉を取り出し、同様に差し込んでみる。
しかし、どれもマイクロウージーには一致しない。
「そんな……まさか、配給ミス!俺じゃ駄目なのか!?」

71 :[1日目午前6時過ぎ:駅]:01/12/14 11:00 ID:pQxAuFcX
さっきまでの安堵感が一瞬にして消え、hydeの心に焦りと不安が忍び寄る。
――その時、hydeは弾倉の一つに挟み込まれた紙を見つけた。
何かが書かれている。
hydeはその紙を取り、開いて読み始める。
その文面は、hydeを絶望の淵に叩き込むものだった。

☆とっかえだまシステム☆
このマシンガンの弾は、他の誰かが持っています。
そして、その誰かが持っている銃には、この弾が使われます。
その人を探し出して、弾を交換しましょうね。

「……ふざけんなよっ!!」
hydeは弾倉を床に投げつけた。
無用の長物となった弾倉は、くるくると回りながら、床の上を転がって行った。

72 :[1日目午前6時過ぎ:武道館]:01/12/14 11:02 ID:pQxAuFcX
一度目の放送直後、陽水の周りは非常な喧騒に包まれていた。
それは放送の一時間ほど前、陽水からの提案によるものだった。
「ヨシッ!参加者リストにない奴らを追加させよう!!」
「!?…今からですか?」
ずっと陽水の傍に侍っている奥田民生が聞き返した。
「あぁ。装備はすぐ用意出来るだろう?発信機は…そうだ、旧式の首輪あったろ?
 あれならすぐ付けられる。うん、我ながら名案だ!ハッハッハッハッハッ…」
この提案は国家プログラム実行委員会が提出した参加者メンバーを大きく逸脱させる。
しかし陽水には相当の無茶でも強引に実行出来るほどの権力が与えられていた。
「さっさと居場所の分かるヤツから適当に連れて来い!!」
「分かりました。では放送でその事をお伝えに?」
民生はわずかな動揺も見せず答えた。
「いや、少しこのまま知らせずにやってみよう。アイツらの驚く顔を考えてみろ!?めちゃくちゃ楽しみじゃないか!!」
いつもながらのこの陽水の自信に溢れた横暴は、民生を身震いさせた。
決して恐怖心などではない。最高の悦楽のためだ。
自称『世界一の井上陽水ファン』奥田民生は嬉しくて堪らないのだ。
(死ぬまで井上陽水の人生を間近で見続けられるオレは、なんて幸せなんだろう!!)
民生の顔からは抑えようも無い笑みがこぼれていた。

73 :名無しのエリー:01/12/14 11:10 ID:i28R+JFQ
うわ、気になる!

74 :名無しの歌が聞こえてくるよ♪:01/12/14 23:20 ID:44RX9Clu
盛り上がってきましたねー。
期待してますage。

75 :[1日目午後2時頃:住宅街]:01/12/14 23:38 ID:YyiTufSY
氷川きよしは走っていた。
この男はさっきまで隠れていた公園で平井堅と松岡充のやりとりを息を潜めて見ていた。
それまで氷川はまさかこんな馬鹿げたゲームに本当に乗っているミュージャンなんていない。いるはずがない。
そう思っていた。いや、・・・・そう思いたかった。
しかし、松岡充は平井堅の身体を撃ち抜いたと同時にこの男のこんな思いを一瞬にして撃ち砕いた・・・。
その瞬間、氷川の身体に衝撃が走った。

76 :[1日目午後2時頃:住宅街]:01/12/14 23:38 ID:YyiTufSY
「どれだけ自分がこのゲームを拒んでも、他の人間はやる気になっている!!少なくとも松岡充…この男は…。」
そう思った瞬間、次に頭に浮かんできたのは「ここにいてはいけない!!」ということだった。
「さっきまでの平井と松岡の闘いで他の「やる気」になっている人間が集まってくるかもしれない。
 そうでなくとも今、この松岡という男に見つかってしまえばおそらく自分も……。」
氷川はそっと立ち上がり紅く染まった平井の背中の方に向かって手を合わせた。
…たった今殺された人間を拝んだのは初めての瞬間だった…。

77 :[1日目午後2時頃:住宅街]:01/12/14 23:38 ID:YyiTufSY
短い合掌のあと、氷川は松岡がいる逆の方向、南出口へ向かって必死に走り出した。
その姿を松岡に見られたかどうかなどもう気にしていられない。
一刻も早く自分の隠れ家を見つけなければ、氷川はそう思っていた。
……「なんで、オレがこんな目に!!」「演歌歌手の、自分が!!」
走り出すと、今まで抑えていた怒りが一気に噴き出した。
特に、昨今のブレイクはこの業界に入ってやっと掴んだチャンスだったのだ。

78 :[1日目午後2時頃:住宅街]:01/12/14 23:39 ID:YyiTufSY
歌番組の打ち合わせ最中に陽水が部屋に入ってきて、突然、自分に何かを嗅がせたところまでは確実に意識はあった。
問題は…そこからだった。
「ゆっくり運べ!!この野郎!!」遠のく意識の中で陽水の声が聞こえてきた。
「この人は演歌歌手だから参加させなくてもいいんじゃないでしょうか?」奥田民生の声だ。
「ん?…まあ、捨て駒みたいなモンだな!!なんかの役に立ってくれたら儲けモンってなもんだ!!ダハハハハハ!!」
そう氷川は思い出した。自分がいつ意識がなくなったのか、Jポップではない自分が参加させられた理由も。
もともと氷川は自分のもつ便利屋のイメージのコンプレックスを抱いていた。
しかし、今回はそんな自分を嘲笑うかのように本当に必要とされていない、
おまけ程度の理由で参加させられてしまっている…。
そう思った瞬間、氷川は考えた。
「……井上陽水を殺そう……。」

79 :[1日目午後2時頃:住宅街]:01/12/14 23:39 ID:YyiTufSY
目標は決まった。
絶対に自分のこの手であの男に止めを刺そう。そのためには武器が必要だ。
氷川のディパックには武器として数珠が入っていた。
そんな自分を馬鹿にしたような偶然も氷川に怒りを増幅させる原因の一つになっていた。
そして、隠れ家を早く探しさなければ!!そう思った氷川の目の前に一軒のコンビ二が見えてきた。
「…ここを拠点にしよう…。食料にも当分困らないだろう…。」
流石に自動ドアは既に動いていなかったが、無理矢理こじ開ければ入ることができた。

店内はシーンと静まっていた。「どうやらこのゲームは本当のようだ……。」静けさが氷川に事実を教えた。
「少し落ち着くためにコーヒーでも飲むか…。」
そう思い、奥にあったインスタントのコーヒーを手にとろうとした瞬間、レジカウンターから一つの声が放たれた。
「いらっしゃいませ。」
驚いた氷川が振り向いたその先には………「あの」松岡充が銃を構えて立っていた…。

松岡充は見ていた。自分がいる逆の方向の出口を必死に走り出て行く氷川きよしの姿を。
しかし、松岡は追いかけなかった。いや、追いかける必要はなかったのだ。
氷川が走っていく方向には1軒のコンビニしかないことも。そして、氷川が自分以上に追い詰められていることも。
氷川があのコンビニに隠れることは容易に想像できた。

80 :[1日目午後2時頃:住宅街]:01/12/14 23:40 ID:YyiTufSY
「!!!」
氷川は瞬時に自分の置かれている状況を整理した。
すると、あの平井の姿が浮かんできた。氷川がこのプログラムが始まってから初めて感じた「死への恐怖」だった。
平井を殺した張本人である松岡充が目の前にいる。こっちに銃を構えている。…自分を殺そうとしている!!
「……!!!!!!」
氷川は手当たり次第の物を投げた。
昔から物を投げるような粗末なことはしなかったがこの時だけはそんなことは考えなかった。
缶コーヒーやコーラのボトルが松岡に向かって次々と飛んでいく。
しかし、こんなことはただの時間を稼ぐ方法の一つにしかならない。
「何か…!!武器になりそうな物は!!」
……あるはずがない。ここはコンビ二なのだから。
その瞬間、「パン」という冷たい音が店内に響いたと同時に氷川の足に表しようのない痛みが走った。
松岡が痺れを切らし、とうとう銃を撃ってきたのである。
松岡は、一呼吸置いて、氷川を見下すような目で、こう言った…。
「あんまり手ぇ、焼かせないでくださいよ…。」

81 :[1日目午後2時頃:住宅街]:01/12/14 23:40 ID:YyiTufSY
「何故、ここまでこのゲームに乗ることができるのか?」
氷川には理解できなかった。ここで理解できるていることは、殺らなければ殺られるということだけだった。
しかし、このゲームの主催者である井上陽水を殺す決意はあったが、
他の参加者を殺す決意はしていなかった。というより、できていなかった。
それに何といっても、この男は、「あの」松岡充である。説き伏せるなどということは不可能である。
方法は全て無くなった。
「ここまでか……。」
氷川が死を覚悟した、その瞬間、松岡でも、ましてや自分の声でもない、第三者の声が店内に響いた。
「あ〜、アチいなあ。」
その声の持ち主である桜井和寿が入り口に立っていた。松岡と同じように銃を構えて。

82 :[1日目午後2時頃:住宅街]:01/12/14 23:41 ID:YyiTufSY
「そりゃあ、フェアじゃねえよ。松岡君。」
桜井和寿が松岡に向かってこう言った。
「まいったな。桜井さんが来ちゃうとはなあ。」
一瞬にして、その場の雰囲気が変わった。変わったというより、桜井が変えてしまった。
こんな状況の雰囲気さえも変えてしまうのも桜井のスター性が成せる技なのだろう。
松岡と氷川の置かれている立場が変わった。
自分が何も武器を持っていないとはいえ、松岡もわざわざ無駄死をしたくはないだろう。
桜井が言った。
「行けよ、松岡。ここにいる誰一人死ぬのはイヤなんだよ。早く!!」
どうやら桜井も人は殺したくないように氷川には見えた。
「……、助かりましたね。氷川さん。」
松岡はそう言い残して、こちらに銃を向けながらこの場所を後にした。

83 :[1日目午後2時頃:住宅街]:01/12/14 23:41 ID:YyiTufSY
「いや、助かりました。桜井さん。」
氷川が命の恩人である桜井に話し掛けた。
「やっぱりやる気になってる人がいるんですね……。
 こんな、こんな馬鹿げたゲーム開いた陽水さん…許せませんよ!!俺、あの人を殺し…」
氷川は今までに自分の中に溜め込んだ陽水に対する怒りを桜井にぶつけるかのように話そうとした、その瞬間、
「!!!」
氷川は喉に火がついたような熱を感じた。
「わりいな。氷川君。オレ、ファンの為に生きなきゃいけないから。」
桜井は引き金を引いていた。氷川の喉に向かって、吉田拓郎から奪ったであろうと思われる銃で。
「何…で…。」
氷川が倒れこみながら、小さな声で桜井に問い掛けた。氷川が放った最期の言葉だった。
「う〜ん、お前の演歌、俺は好きだったよ。あっちに行ったら拓郎さんとデゥエットやってくれよな。」
事切れた氷川に桜井がこう囁き、そこからゆっくりと立ち去った。

84 :名無し:01/12/15 13:36 ID:OUBEqBiz
(・∀・)イイ

85 :名無しのエリー:01/12/15 23:12 ID:iVk2W0B6
あげ

86 ::01/12/15 23:43 ID:Pi2NmTYY
>>75-83
名前欄修正
×[1日目午後2時頃:住宅街]
○[1日目午前6時半:コンビニエンスストア]

87 ::01/12/15 23:46 ID:Pi2NmTYY
浜崎あゆみは今、ある女と行動を共にしている。宇多田ヒカルだ。
この組み合わせはアルバム対決で激しく対立した
過去の出来事を考えると少し意外かも知れない。
しかしそれ以後、会話などが繰り返される内に、二人の関係はそれ以前より遥かに近くなっていた。
そして今宇多田は浜崎にとって、こういう状況でも信頼するに足る人物となっていたのである。
そこで浜崎は武道館で傍にいた宇多田に合流地点を伝え、
とりあえず宇多田の提案により外部との通信手段を手分けして探すことになった。
しかし、浜崎は心配だった。宇多田の事が。
理由はまず宇多田の武器、これがよく分からないスイッチだった。爆弾かとも思ったが あまりに小さい。
小さいマッチ箱にボタンが付いたようなあまりに適当な代物で、しかも何の説明書も無かったらしい。
使い道すらわからない怪しい物だった。
そしてもっと心配だったのが宇多田の様子だった。武道館にいた頃からどうにもおかしい。
矢沢の死体を見た後も妙に無表情で、外で合流した後も何とも言えない違和感が絶えなかった。
浜崎はショックが大きすぎた所為だと思い手分けすることに反対したが、
いつもと変わらぬ宇多田の説得力のある理屈に、渋々ながらも了承したのだった。
(とりあえず今出来ることに集中しよう。)
雑念を振り切り、浜崎は袖のデリンジャーを確認してから通信手段を探した。

88 :[1日目午後2時頃:ビジネス街]:01/12/15 23:47 ID:Pi2NmTYY
宇多田はこのゲームに巻き込まれてからの自分の異変に気付いていた。
矢沢の死体を見た時、宇多田はただ驚いただけだった。その驚きも死体を見たからではなく、
ただ何の感情も湧かない自分に驚いただけのものだった。
そう異変とはある種の感情が欠けている事。
悲しみ、恐怖、哀れみ、そんな感情が宇多田からはすっぽりと抜け落ちていた。
原因はおそらく頭に埋め込まれた発信機だろう。
たまたま宇多田の発信機にだけ問題があったのか、
それとも他の参加者と違い、以前脳内出血と言う事故を味わったからなのかは分からないが、
発信機が宇多田の脳に作用したのは明白だった。
そして欠けた感情を補うように残りの感情が膨れ上がった。歓喜。
矢沢の亡骸を思い出すたびにぞくぞくする確かな悦楽が宇多田を包む。
そしてその暗く醜い快感を押し止める感情はもう無かった。
宇多田は堪らなかった。
元来の旺盛な知的好奇心がとりあえず人体を壊すことに向けられた。
もっともらしい理由を付け浜崎と一時的に別れたのも銃を持たない獲物を探す為だった。
そんな時、最早静かなケダモノとなった宇多田の目が獲物を捉える。
金属バットを構えた矢井田瞳だった。

89 :[1日目午後2時頃:ビジネス街]:01/12/15 23:48 ID:Pi2NmTYY
矢井田は同行者のaikoと落ち合う場所だけを決め、別行動をとっていた。
どこかにいるであろうゲームに乗る意思のない者達を見つけ
仲間に入るために、二手に分かれてしまったのである。
勇敢な事ではあったが、その勇敢さはどちらにとってもプラスに働きそうには無かった。
そして用心深く辺りを見回した時、宇多田を見つけてしまった。

先に矢井田に気付いていた宇多田は辺りを気に(するフリを)しながら無防備に近づく。
一見、気が逸っているとは言え思慮の足りない行為に見えた。だが勿論計算があっての事である。
すこし訝しげにバットを構えた矢井田に、両手を挙げながら困惑気味な顔を作って話し掛ける。
「おいおいカンベンしてよ、ヤイコさん。やっと人に逢えたってのに。」
宇多田は(前の)自分が多くの人間に信用されているのを知っている。
あとはそれを最大限に利用すれば良いのだ。
そう思いながらポケットに入っている『切り札』の存在を確認した。
「私はやらないって!ヤイコさんだって知ってるっしょ!?」
宇多田が少し懇願するような表情を見せれば矢井田はあっさりバットを下ろした。
「信用してくれてありがとね。」
宇多田はにっこり笑った。あまりに予定通りだったから。

90 :[1日目午後2時頃:ビジネス街]:01/12/15 23:48 ID:Pi2NmTYY
矢井田から事情を聞いていたが話に興味は無かった。早く壊してみたかった。
「!…あれ?ヤイコさん、あれ何?」
言葉を聞いて振り向いた矢井田の金属バットを素早く奪い取り後頭部にそれをブチ当てた。
倒れかかった矢井田にさらに三、四発お見舞いすると、糸の切れた操り人形のように崩れ落ちた。
「ふ〜ん、こんな感じか…なるほどねぇ。」
どうもいまいちお気に召さなかったようだ。宇多田は金属バットのへこんだ部分を見ながら呟いた。
(次は持つ方で殴ってみるか。感覚は違うだろうしな。)
そう思いながらバットを眺めていた時、背後に視線を感じた。
宇多田は片手をポケットに突っ込みながら振り向いた。そこには浜崎が立っていた。

浜崎は困惑していた。
(ヒッキー?何をしてるの?なんで人が死んでるの?あんたの目の前で?)
考えのまとまらない内に浜崎は宇多田に銃口を向けていた。
(殺したくない…) 銃口の先は震えていた。
冷静に浜崎の心情を読み取った宇多田は、後藤に投げかけた。
「まさか私を殺すの?」
電気に打たれたように浜崎の身体に衝撃が走った。体中から力が抜ける。
構えた銃すら落としてしまいそうになった。
そして沈黙が続く。銃が重い。小さなデリンジャーが今まで持ち上げたどんな物よりも重たかった。
沈黙、銃の重さ、宇多田の言葉、そして宇多田の視線に耐えられなくなった時、浜崎は逃げ出していた。

91 :[1日目午後2時頃:ビジネス街]:01/12/15 23:49 ID:Pi2NmTYY
しかし少し走り出したところでなんとか浜崎は踏み止まった。
(ダメなんだ、せめてここでヒッキーを止めないと!それがあゆの責任なんだ。)
向き直り再び銃を構えた。震える腕を押さえつけて。
「ヒッキイ――――っ!!!」
自分の身体に渇を入れるように大声をあげ、引き金を絞る。
次の瞬間、辺りに破裂音が響いた。

浜崎の前頭部が弾けた音だった。
そのまま浜崎の身体は後ろに倒れ、デリンジャーは数メートル後ろに投げ出された。
宇多田がそれを回収しようとした時、交差点の影から人が現れ銃を拾い上げる。
その男は宇多田の方を見ることなく全速力で逃げ出していった。浜崎を殺した武器を恐れたのだろう。
男は河村隆一だった。
宇多田は舌打ちこそしたが、殆ど悔しがる事も無く
ポケットからスイッチと紙切れを取り出すと適当に捨てて街に消えていった。
紙にはこう書かれていた。

[爆破スイッチ使用方法]
えーこれは諸君の頭に埋め込まれた発信機を爆発させるスイッチである。
スイッチを押すと、装置から2番目に近い発信機を自爆させることが出来る便利なシロモノだ。
つまり自分から少し離れた相手などに使うのが望ましい。
ちなみに使用回数は一回なのでよく考えて使うことをオススメする。

92 :名無しのエリー:01/12/16 00:06 ID:ZIVnoHgL
ぉもしろい

93 :.:01/12/16 14:18 ID:c/5nW3fs
なんで桜井は松岡殺さなかったの?

94 :名無しのエリー:01/12/16 15:08 ID:0gSaXJKw
>>93
松岡も銃持ってたし簡単に倒せる相手じゃないと思ったっつう解釈をしとる

95 :[1日目午後4時半:パチンコ屋]:01/12/16 15:11 ID:0gSaXJKw
aikoは行きつけのパチンコ屋のカウンターの隅で震えていた。
いつもは客を煽る店員の店内放送の声や玉の音、数十台のパチンコ台から流れる電子音で騒々しい店内は
台の液晶画面も消え真っ暗で、ただただ無音のだだっぴろい空間だった。
そこにaikoの歯がカチカチと震え合わさる音だけが小さく響く。
「みんなどうしてんやろ…もう何人か死んでるやなんて…うぅ…う…」
aikoは泣き顔で口をへの字にして必死に涙を堪えていた。

96 :[1日目午後4時半:パチンコ屋]:01/12/16 15:12 ID:0gSaXJKw
…私は小さい時からミュージャンになりたかったんや。
今でも覚えている…中学生の時、ホテルのロビーで井上陽水さんを待っていたら、
たまたま陽水さんがエレベーターから降りてきた。
私は警備員の制止も振り切って陽水さんの元へ駆け寄って、言った。
「ワタシ絶対、音楽業界に入ります!」
憧れの陽水さんを前に、私の心臓ははちきれそうやった。
そう言う私に陽水さんは「おぉそうか、待ってるから早く来いよ!」そう言った。
…あの時は本当に嬉しかった!
あの出来事が私の熱い気持ちを後押ししてくれたからこそ私はミュージャンになれた。
いわば陽水さんが私をミュージャンにしてくれたようにも思える。
…なのに今、陽水さんに私のミュージャン人生を狂わされている。
すべては「陽水の掌の上」ということやろか?
私の努力も、過去も、未来も、人生すべても…!
悔しい。やるせへん。

憎い。憎い。しかしaikoの怒りは悲しみと絶望感で萎えていた。
ただ両の拳を握り、「ぁあ…うぅぅ…」と声にならない声で咽ぶだけだった。

97 :[1日目午後4時半:パチンコ屋]:01/12/16 15:12 ID:0gSaXJKw
「…アイコー?」
突然入り口付近から聞こえてきた声にaikoはカウンターの中で身を固くした。
「…アイコー?…いないのか?」
(この声は!)
聞き覚えのある声に、aikoはカウンターから飛び上がるように身を出した。
「太一くん!!!」
aikoを呼ぶ声の主はaikoの恋人でもある、TOKIOの国分太一だった。
国分は「aikoのことだから、ここだと思ったよ!」と言いながら笑顔でカウンターまで駆け寄ってきた。
この店はよく二人で打ちに来ている行きつけの店だ。
「なんで、あんたここにいるねんよぉ?」
そう言いながらaikoの顔は意外な人物の登場に安堵感でくしゃくしゃだった。
「aikoがさ、腹減ってるといけないと思って、食べ物とかいろいろ持ってきた!」
そう言って背負っていたかばんを降ろし、中から次々と食料を出し、並べた。
aikoはわかっていた。国分は私を励まそうと思ってここまで来てくれたことを。
その恋人の優しさに感動してaikoは打ち震えた。
だが…aikoは恐ろしい事に気付いた。

98 :[1日目午後4時半:パチンコ屋]:01/12/16 15:13 ID:0gSaXJKw
…ちょっと待ちーな!
たしか太一くんはこのゲームには参加しておらず、この指定エリア内に立ち入ることを禁じられているはず!
無関係者がこのエリアに立ち入ったことが発見された場合、即射殺されるというルール…

「太一くん!!あんた、ここに居ちゃあかんやんか!」
「はは…!大丈夫だよ!ここに来るまで誰にも見つからなかったし」
「そういう問題やないやろ!?早く帰ってや!私はあんたまで巻添えにしたくないんや!」
さっきまで恋人に会えたこと、何よりその優しさに綻んでいた顔が強ばった。
「ダメや!帰れっちゅうに!太一くんの優しさは嬉しいて!そやけど、私はあんたが危険に晒されるのは嫌なんや!」
「aiko、お前、一人で耐えれるのか?口では強がったことばっかいつも言うけど、
 お前が誰より寂しがりで、誰より音楽を愛してるお前がこの状況に耐えれるのか!?」
aikoはあまりの図星に一瞬言葉を失った。が、しかし、これ以上大事な人間を失いたくはない。
「だめや!帰れ!帰れ!帰れ!帰ってくれやっ!」
aikoはこの優しさに甘えたい気持ちを吹っ飛ばすかのように首を横にぶんぶんと振り、かばんを国分の胸元に投げつけた。
「私は…もうこれ以上誰も私のそばからいなくなってほしくないねん…だから…」
そこまで言ってaikoはカウンターの下へ泣き崩れた。
「aiko。俺も一緒だ。俺もみんなが争うのは嫌なんだ。
 だから俺も一緒に解決策をとるための協力をしたいんだ。それに今さら帰ろうにも帰れないだろ?」
aikoはカウンターの下にうずくまったまま肩を震わせていた。
愛情は今、ここにある。私の音楽を愛する熱い気持ちはハートにある。
私はこんなところで立ち止まってるワケにはいかないんや!
私はまた熱いヤツと、熱い音楽をしたいんや!
そや!私は熱いやつらを集めてこの汚れたシステムを叩き潰さなきゃいけないんや!!

99 :[1日目午後4時半:パチンコ屋]:01/12/16 15:14 ID:0gSaXJKw
「ありがとう!!太一く……!!!」
『パンッ!パンッ!パンッ!』

…aikoがうずくまった姿勢から立ち上がろうとした瞬間だった。
その『パンッ』という音と共に、国分がゆっくりと倒れてきた。
カウンターから少し覗いたaikoの顔の前に、目を見開いた国分の顔が、ごちん、という音を立てカウンターに落ちてきた。
目が合っていた。実際には目が合ってるのかはわからないが、
目の前、ほんの10cm先ほどに恋人の最期の顔があり、何かを言いたげな表情で固まっていた。

100 :[1日目午後4時半:パチンコ屋]:01/12/16 15:14 ID:0gSaXJKw
「ぁあ…う…ぁぁ…」
aikoの顔がみるみる恐怖と悲しみと怒りでくしゃくしゃになってゆく。
眉を八の字にし、細めた目から大粒の涙が止めどなく溢れ、歪んだ唇からよだれが垂れる。
もう、aikoには今の状況も何もかもわからなくなっていた。
頭が真っ白で、恋人を目の前でなくしたショックに頭が混乱した。
「ぁああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!」
絶叫と共に立ち上がり、手当りしだいのものを、涙で前が見えないが国分を撃ったヤツがいる方向に思いっきり投げまくった。
まるで子供がだだをこねるような動作だったけれど…
aikoの投げた物の中に塩酸ビンが混じっていた。最初に支給されたものだった。
力任せに投げられたビンは銃を構えたアーミー服の男の顔面に命中した。

「ギャァ〜〜〜〜!!!」

…その悶絶する声にaikoはハッと我に返った。
兵士は顔面を手で覆い、のたうち回り、しゅう、しゅう…という音と異臭があたりに立ちこめる。
兵士の手のすき間から硝子の破片や溶けてただれ落ちる皮膚が見える。

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